「愛その他の悪霊について」

愛その他の悪霊について

愛その他の悪霊について

家庭内別居中の夫婦、そして両親からの愛を受けられないその子ども。彼女はアフリカ出身の奴隷たちの間で―――もちろん白人としてではなく―――すくすくと育つ。けれどもある日、彼女が狂犬にかまれ、修道院へと入れられる。そんな彼女への熱情を抑えられない若い神父、デラルラ。彼らを取り巻く司教、医者、修道院院長。


「悪霊」とはなんなのか?

彼はカエターノを思い止まらせようとした。愛というのは自然の理に反した感情であって、見知らぬふたりの人間を、さもしい不健康な相互依存の中に閉じ込めるものであり、強烈であればあるほどはかない関係に陥らせるのだ、と説いた。しかし、カエターノには聞く耳がなかった。彼はキリスト教世界の抑圧から可能な限り遠く離れたところに逃げるという考えに凝り固まっていた。

こんな一文があるかと思いきや、

「永罰に処されるのを恐れないのか?」。
「もうすでに処されているも同然です。が、聖霊が私を罰することはないと思っています」とデラウラ派怯えることなく言った。「昔からずっと信じてきました、聖霊は信仰よりも愛の方を重んじるのだと」。

そくざにデラウラが反駁する。


「愛」が人間を破滅させる「悪霊」なのか、それとも「愛」を抑圧する宗教的権威や世間体こそが「悪霊」なのか?答えは出ないまま、物語はふたりの死をもって終わる。