「無関係な死・時の崖」

無関係な死・時の崖 (新潮文庫)

無関係な死・時の崖 (新潮文庫)

都市は基本的に人間の意識が作り出したものだから、きわめて合理的であり、だから死体や排泄物、さらには「死」という概念そのものさえも見えないところへと隠されてしまう。動物的で、脳の奥に眠るようなそれが表に出てきてしまっては、文明の前提そのものを否定することになってしまう。それがある日突然、自分の部屋に現れる恐怖。消そうと思えば思うほどくっきりと存在の重みを増していく「死体」。決して逃げられない。当たり前だ。各人の脳の奥深くに埋まっているんだから。どかそうとする方がどうかしている。しかし受け入れるわけにも行かない。
そんなジレンマが描かれていた。