「金閣寺」
- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/05
- メディア: 文庫
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いいかね。美というものはそういうものなのだ。だから猫を斬ったことは、あたかも痛む虫歯を抜き、美をテツ決したように見えるが、さてそれが最後の解決であったかどうかわからない。美の根は絶たれず、たとい猫は死んでも、猫の美しさは死んでいないかもしれないからだ。そこでこんな解決の安易さを諷して、趙州はその頭に履をのせた。彼はいわば、虫歯の痛みを耐えるほかに、この解決がないことを知っていたんだ。(p184)
ページは忘れたけど、「美は音楽のように一瞬で消えていく美と、金閣のように永遠に残るもの、残るだろうものとの二種類がある」みたいな文があった。主人公は放火をすることで金閣を後者から前者へと変換したわけだ。
では、なぜ三島由紀夫はこれほどの美しい物語を、「文学」という形式で記したんだろうか。そんなことを考えている。