残雪「暗夜」

暗夜/戦争の悲しみ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-6)

暗夜/戦争の悲しみ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-6)


残雪の方だけ読了。
さっぱりわけがわからない。

池澤夏樹カフカ的と評しているが、カフカともどこか違う。カフカの小説は何ていうか、不条理なりにも秩序がある。初期条件と境界条件と物理法則から一意的に未来が決定するように、物語の前提を受け入れてしまえば、キミョウキテレツな世界にもリアリティを感じることができる。

残雪の小説にはそれがない。ちょっと前に書かれていたことをすぐに覆したり、登場人物の輪郭が妙にぼやけたり。法則がないという法則。普通文学作品は、―――テキスト解釈とかは考えないとして―――それが背負う「背景」が透けて見えるものなんだけど、それが見えない。一応文化大革命がバックにあるんだろうけど、それもよくわからない。まるで宇宙人のメッセージを読んでいるみたいな、そんな感じだ。

そしてその曖昧さと反比例して浮かび上がる、漠然とした孤独感、徒労感、虚無感。対立もなければ協力もない。動物的、原初的な意志。暗い夜。

読んでいてふと、後ろを振り向きたくなる。