「俺は俺の弱さがすきなんだよ。苦しさやつらさも好きだ。夏の光や風の匂いや蝉の声や、そんなものが好きなんだ。どうしようもなく好きなんだ。君と飲むビールや・・・・・・」鼠はそこで言葉を呑みこんだ。「わからないよ」
僕は言葉を探した。しかし言葉はみつからなかった。僕は毛布にくるまったまま暗闇の奥をみつめた。
「我々はどうやら同じ材料から全く別のものを作りあげてしまったようだね」と鼠は言った。

 ―――村上春樹羊をめぐる冒険